「自主退職ということですか?」
「いや、殆どがリストラに近いものらしい。だが、多額の退職金を与えられており、上職かつ本当に能力があるものから解雇されていっているらしい」
話を聞き進めると、人事部はすでになくなり、社長の権限になっているらしい。
「各会社へ、紹介状みたいなものも用意されるらしく……皆、それぞれ紹介された会社で働いているらしいが、我が社に来たメンバーはこの街の暮らしが、我が社の働き方がよくあっているだろうと」
「紹介状って言ってますけど、健斗さんは何も聞いていない感じですよね。それ」
「だから、なんか面倒くさいことになってそうだなぁ、と、思っている。─だが、まぁ、俺が入社した時、話したあの人らしいとも思うよ」
「?」
「言ってることはめちゃくちゃに聞こえるのに、とてつもなく優秀で、見た目は怖いと言われがちだが、中身はとても優しいおじさんって感じの人で……だからこそ、ユイラの一件を黙認したことが許せなかったわけだが」
……健斗さんが怒るのも、無理はない。
何故なら、ユイラさんは何故か生後まもなくで家を追い出され、施設に入っている。
その施設内では虐待されて育ち、そこから出てからは……口に出すのもおぞましい生活の末、傷だらけ、血だらけ、貞操も何もかも失った状態で、真冬の雪が降る中、ノースリーブのワンピース姿で、健斗さんと出会ったという話を聞いたことがある。
それがふたりの始まり。
「御園にも来ているのか、後で調べておきます」
「来ていたらどうする?」
「ん〜人事は基本、人事部に任せていますし……そうですね。とりあえず、これから藤島に探りを入れます」
「……行動が早過ぎないか?」
「早くて損になることは無いですし……ああ、後で探りに入ってくれる者に伝え、連絡先を送りますね。そこで話して貰って、何かあれば俺に」
「いやいやいや」
「大丈夫ですよ。だって、健斗さん、沙耶の父親で、俺の義父になってくれるんでしょう?」
─御園と縁続きになることは、避けられない。
つまりこれから先、それなりに面倒くさいことは増えるのだと理解していて欲しい。
その思いで微笑むと、健斗さんからはため息が。
「お前は絶対、敵に回さないようにしないと」
「ハハッ、なんだかんだ言って、一度も御園を裏切る素振りすら見せたことがないでしょう?」
─陽向さんの古くからの付き合いである彼への信頼は、陽向さんの中では勿論、相馬の中でもとても高い。
特に、最愛の婚約者の父親なのだから。
「裏切る理由、何も無いからな。というか、後が怖いわ」
当たり前のようにそう言ってもらえることが、御園家の人間にとっては、どれだけ珍しいことか。
それを分かっていないからこそ、彼のことを、彼らのことを信じ、親しくしたいと思ってしまう。
「末永く、よろしくお願い致します」
相馬はそう言って、心から笑った。


