世界はそれを愛と呼ぶ



「……調べ、ついたんですか」

「うん。槙が声をかけられた男、湊が回収したって話は聞いたでしょ?」

「ええ」

「その男を引き摺って、まぁ、その、口には出せないけど、“色々”して、帰ってきた時には、そう言ってた」

……考えすぎて、そういえば、中座したのを思い出す。

「流石と言いますか、吐かせたんですかね」

「吐かせたというか、話によると、天ヶ瀬の内部は常磐より酷いみたいで……誰ひとりと籍を入れていないから目立たないけど、その分、子どもは多く成しているらしく。大半の愛人は亡くなっているけど、子どもも利用されまくりで、自分の兄弟は把握していないと聞いた」

「……」

「望まぬ子ばかりで、だからこそ、不幸にも亡くなる子どもが出てきて……今の当主は両親も、兄弟姉妹もいないから、後継となるべき子どもは沢山いるにも関わらず、当主はふんぞり返っているらしい」

─放っておいたら、とんでもないことになっている。
相馬は溜息をつき、理事長に目の前で電話する断りをして、すぐに本家へ電話をかける。

「……で、何を命令したんだ?」

「とりあえず、血筋の確認を。向こうも暇してる頃合でしょうから、天ヶ瀬の子どもについて、内部を主に調べさせようかと」

「なるほど。方法とか聞いても?後学のために」

「方法……そう言われても、俺が動くわけではないので。あくまで想像ですが、恐らく、彼らの普段のやり口から想像するに、お香や酒を利用して、深夜に忍び込むかと」

「深夜に……?」

「夜目が効くんですよ」

相馬の言葉に疑問を抱いた理事長に、ニコッと微笑んだタイミングで、黒橋家に到着。

「ありがとうございました。とても有意義でした」

「いや、こちらこそ……にしても、夜か……」

ブツブツと何か言っている。
彼らは上手くやるだろうが、あくまで、この任務を果たす御園側は“人外”なので、気をつけて欲しいと、心から祈る。

「─あれ?相馬じゃん」

沙耶を抱えて外階段をあがっていると、「話し声が聞こえて、レンくんかと」と、笑いながら、理事長を招きに家から出て来た悠陽(ハルヒ)に鉢合わせ、沙耶を見て、「よく寝てるね〜」なんて、のほほん。

「……一応、理事長として聞くな?お前、学校は」

すると、後ろにいた理事長がそう言って、

「え〜サボった☆」

それに楽観的に答える、悠陽。

「怒られるぞ、麻衣子に」

「もう怒られた!」

「……夏陽(ナツヒ)は?」

「寝てるよ〜」

「お前ら、高一から……先が思いやられる」

「あははっ、大丈夫だよ〜」

挨拶をしながら家に入ると、リビングで本を資料に目を通していた健斗さんが顔を上げた。

「─騒がしなと思ったら、お前か」

「お前かってなんだよ〜話あるって呼び出したの、健斗じゃん」

「そうやけど」

素っ気ない態度を取る健斗さんは、スマホを取り出しながら、読んでいた資料を理事長に渡した。
理事長はそれに目を通しながら、ソファーに座る。

「─悪いな、こいつに連れてこられたんやろ」

「いや、槙の家のことも知れたので、悪い時間では……今度のパーティーの件とかについても、それなりに意見を頂けたので、参考にします」

「パーティーへ意見?こいつが?」

「ええ。湊さんたちが考えていたことを」

「…なんや、驚いて損した。こいつ、肉体派だから、そんな頭脳的なことはせぇへんのにと」

はぁ、と、ため息をついて、健斗さんは顎で指し示すが、その先にいる理事長はやけに真剣に資料を読んでいる。

「俺も、湊から報告は貰って……槙が、天ヶ瀬の落胤と。まずいか、相馬」

「いえ、特にまずくはないかと。廃墟への厳戒態勢も、内部を含めて増しましたし、話によると、氷月が通り道に細工をしたようで」

「ああ、地下の?」

「はい。すみません、勝手に」

「いや、勝手じゃないぞ。ちゃんと許可を取りに来たから、俺が二つ返事した」

……想像外の答えが返ってきて、相馬は思わず。