「希雨が死んだら、久遠も逝くだろう。自然に逝けぬ代わりに、己の手でね」
「……」
久遠は、俺達のように番の後を追えない。
何故なら、『選ばれた側』だからだ。
一方、希雨は久遠が死んだら、自然死を迎える。
何故なら、『選んだ側』だからだ。
─それは、なんて残酷な。
「……つまり、今、ここで無理に契約を結んでも、沙耶の心が楽になっても、その後、襲い来るもので完全に壊れる可能性があるから、今は結ばないってことだな」
黙って話を聞いていた薫がそう呟き、兄さんがそれに対して頷くと、「わかった」と言って、何故か、桜を連れて屋上をあとにする。
桜は「え、私も?!」と言いながら、後をついて行き、
「相馬、時間がある時にあなたのことを教えてね」と、千歳に慰められていた柚香が呟く。
「……沙耶に近付くな、とは言わないんだな?」
「?、それは、私が決めることじゃないでしょう」
「……」
「沙耶が貴方を愛していて、貴方も沙耶を愛してる。なら、私に出来るのは見守るだけよ」
柚香がそう言ったタイミングで、チャイムが鳴った。
「兄さん」
「─水樹、陽向さんが勇真さんのとこにいるから、事情を説明して、パーティーの準備を頼む。それには、久遠も付き合わせて。久遠から目を離すな」
「わ、わかった」
「氷月、お前は叔母さんに連絡とって、パーティーに参加してもらえるか聞いて、あと、暫く、甲斐の代わりを頼む。甲斐には妻から目を離すな、と、伝えるつもりだから」
「ん。わかった」
「千歳は柚香を……柚香、悪いが、沙耶のいちばんの親友だと思って、ちょっと窮屈な生活で我慢して」
「わかった。千歳、迷惑かけるけど、よろしくね」
「いや、クラスでは世話になってるし」
「相馬、俺はー?」
「蒼生は、真姫を守れ。彼女は向こうからしたら、間違いなく、消し損なった邪魔者だ。何があっても」
「りょーかい」
相馬は沙耶を抱えて立ち上がり、
「光輝」
「ん、なに?」
「悪いが、未成年の子供用にパーティーで配れる玩具?を用意して欲しい 」
「わかった。資料まとめて送るよ」
「助かる」
一通りの指示を出し終わると、
「─じゃあ、何かあったら連絡して」
そう言い残して、学校を二人で早退して行った。


