世界はそれを愛と呼ぶ




「……『面白い』って、何」

「え、感想。そんな恐る恐る話さなくても、別に嫌悪感とかそんなものは無いからの意思表示?分かりやすいでしょ。こちらが自覚してない感情も読めるなら」

─柚香の相変わらずなさっぱりはっきりとした性格に、明らかに蒼生さんが面食らっている。

「私、柚香のそういうとこ大好き」

澪がそう言いながら、柚香に抱きつく。

「フフフッ、嬉しい〜」

気づけば食べ終わっているお弁当、今度はクッキーを齧りながら。

「……目を5秒以上合わせると、俺の気持ちが伝わると言っても?」

「?、面倒くさい時には便利じゃない?」

「声音の使い分けで、相手の言うことを聞かせることが出来ても?」

「そんな能力あったら、ヤンキー共を締め上げるの、楽よね〜あ、本人からしたら、大変なのよね。ごめん」

「……」

「蒼生、諦めな?柚香、出会った時からこれだから。相馬に対しても、千歳たちに対しても、これだった」

澪の言う通りだ。
柚香は幼い頃から、こんな感じである。

「なんか、相馬も、千歳も、貴方も、みんな、すごいものを見る目で私を見てくるけど、そもそも、沙耶が幼い頃、御園の人が訪ねてきてる時、見せてくれた魔法?みたいなのを見て、感動してる姿を見てからだからね。『あ、そんなに重く考えなくても個性か〜』って思うようになったの」

─明らかな、飛び火である。
視線を向けられ、沙耶は首を傾げた。
何故なら、全く記憶にないからである。

「柚香、それは記憶違いじゃ……?」

「そんなわけないじゃん。ネグレクトされて、公園に置き去りにされた私を家に連れて帰って、お世話してくれて。両親を探し出して、今の私に仕上げてくれたのは、沙耶とか健斗さんなのよ?」

「いや、でも……」

公園に置き去りになっていたことは、事実。
ブランコに乗ったまま、泣いていた柚香を連れ帰ったことはよく覚えている。確か、6歳くらいの頃のはず。

「お陰様で、高校卒業までには全額、親にお金返済することができそうなんだよね。いや〜6歳までしか育ててもらってないから、意外と少額で」

ケタケタ笑ってるけど、笑い事では無い。
柚香は自分の妊娠出産入院費用まで、全部、色つけて叩き返している。親を心から憎み、嫌っているから。

「そこら辺のこと、調べて手続きしてくれた健斗さん達には、本当に感謝してる。ここまでかかった費用も教えて貰えれば、全然返却したいんだけど」

「無理だと思う」

「やっぱり?この間、15回目の申し出を断られたとこ」

柚香を自分たちの娘だと思っている両親。
妹と同然として、可愛がっている兄達。
黒宮家も皆、柚香の言うことは普通に聞く。

この状況下で、『自分は他人なので、お金を返させてください』……なんて、多分、説教ものである。

「あの時の魔法、気になりすぎて聞いたんだよね」

「え、誰に」

「健斗さんに決まってるじゃん」

沙耶がまったく覚えていないのに、柚香が覚えているだけじゃなく、父も覚えているとなったら、確実に沙耶が忘れているだけである。