「『黒橋沙耶は御園相馬の婚約者であり、寵愛を受けている。彼女を害するものは末代まで許さず、同時に、我と同じ存在と思え』的なアクションは正直、沙耶と別れた後はどう収集つける気なんですか?」
「知らん。だから、結婚するつもりだろうと思って、うっかり発言したら、この始末だ」
「あっははっ!」
「笑うな!」
今度は本気で大笑いする勇真は、
「……真面目な話、うちの妹は賢いんですよね」
と、少し間を開けて呟くと、
「あと、数日前に相馬への恋心を自覚させました☆」
ニヤッと笑う。
「自覚させたって……」
「感情を上手く噛み砕けない子だから、一緒に噛み砕きました。─相馬はもう知っているはず。沙耶が怖いものが何なのか、この世界で沙耶を守り抜けるのは誰なのか」
「……まさか、だから反対する気がないのか」
「健斗さんに至っては、相馬と沙耶が初めて会った日。相馬が泣いた日?から、沙耶は相馬と結婚させることになるかもなぁ、と、考えていたそうで」
「……」
「だから、そちらさんが良くて、沙耶が望めば、こちらとしては何も言うことありません。何があっても望んだ配偶者は、命をかけてでも守る御園家に求められるのならば、苦労は多かれど、あなたがたが言う化け物の本能に苦しめられようと、沙耶は幸せだと笑うでしょう」
それでも、御園陽向は怖かった。
御園相馬以上に怯え、震えが止まらなかった。
「…………和子のようにならないか」
従妹の最期。弟の、最後の電話から聞こえた秘密。
全てを知っているように、諦めたように世界を見て、淡々と仕事だけを繰り返して、そうして、あの子の命がすり減っていくのが耐えられなかった。
だから、同じく普通じゃない街に転入させた。
桜が望んでくれたのも、とても都合が良かった。
御園和子に関しては、勇真もよく知っている。
外聞的に消された最期は、彼の記憶も共有していて。
「あの子は、大丈夫です」
確信持って、彼は言った。
彼女を愛する、ひとりの兄。
そんな彼の口から零れる言葉なら賭けてみたいと、陽向は心から思いながら、麻衣子が入れてくれた茶を飲んだ。


