「好きでもない人と結婚して苦労しない人生よりも、大好きな人と結婚して苦労する人生の方が幸せだよ。私だけかもしれないけど……茉白は?」
話を振られた彼女はつられるように頬を赤らめ、
「私も、そういう人生がいいです……」
と、はにかんだ。
それを見て、慧が茉白を抱き締める。
こんなことをするような男ではなかったのに、彼女は凄い。間違いなく、慧の初恋である。
「……凄く、莉華(リカ)に会いたい」
陽向は顔を覆って、愛妻の名前を口にする。
目の前で2組の仲良しを見せつけられ、素直に寂しい。
「?、莉華さん、また体調が?」
「ああ。数日前に熱を出してな。大事の為、マンションの方で休ませてるんだ。だから、即刻帰りたい。帰りたいけど、相馬の様子が気になって気になって」
「今、沙耶の件に関して、街の廃墟の件も含めて色々と調べてくれているんでしょう?その対価として、沙耶を求められたら、こちら側は差し出さなければならないと思うんですけど、それはしないんですね」
「馬鹿。そんなことをしてみろ。そんな、御園が厭う他家の真似などするわけないだろう。人身売買みたいな……大体、相馬がブチギレる。何も解決しない」
「あはは」
「話題を振っておきながら、から笑いするな。勇真。そんなことした瞬間、この街は御園に対して臨戦態勢を取るだろうが」
「よく分かってますね?」
「当たり前だ。この街の姫のような存在だろ」
「正確に言えば、俺達、家族のですけどね。大切に守るべき妹です。だから、上流階級と付き合いがある、というか、そのど真ん中に座を構えている相馬が沙耶のいちばんの味方であるの、正直、俺たちにとっては旨味しかないんですよね。今も既にかなりの人数が動いているでしょう?」
「まあ……」
「きっと、相馬のことだ。何もアクションを示さず、黙ったまま、問題の部分だけ消すことだって出来たはず。でも、沙耶の為に無駄なアクションを見せている」
全てを見透かすような目で、松山勇真は微笑んだ。


