「─沙耶のこと、大切にしてくれてありがとな」
「?」
「放り投げてもいいのに、自分の足の痺れも気にしないで、お前はずっと抱いている」
指摘され、自分は沙耶をずっと横抱きの体勢のままだったことを思い出す。
「でも、沙耶は軽いですし」
「軽くても、そんなに尽くさんよ。この子が怖い夢を見るから、なんて、一緒に眠ったり、ご飯食べさせたり、ずっと甲斐甲斐しく、この子が狂わないように」
少なくとも、世間の普通の恋人同士でもないんじゃないか?と笑われ、世間の当たり前が分からない相馬は首をかしげてしまう。
「次第にわかる事だよ。それより、相馬もかなり顔色が悪い。学校には連絡しておいてあげるから、暫く、沙耶と休みな」
「え、いや……帰りますよ」
「どうして?」
「迷惑でしょうし」
「家は広いから気にしないでくれ。流石に相馬の部屋ほどではないだろうけど、今夜は沙耶の傍で休みな〜」
─半ば強制的、拒否権などない雰囲気。
相馬は従うことにして、沙耶を抱いたまま、沙耶の部屋を目指した。
沙耶の部屋は三階の突き当たりで、部屋は広々としているのに、物の少なさが異常。
その中で明らかに大きなベッドは、大人二人は余裕で眠れる広さで。
沙耶を横にし、上着だけ脱いで、沙耶の頬を撫でる。
ベッドに頬杖をついて、子どものように眠る沙耶を眺めていると、次第に相馬も眠くなってきて。
そのまま、少しうつ伏せになって寝ようかと思ったら。
「…………そ、ま」
掠れた声で、名前を呼ばれる。
顔をあげると、寝ぼけ眼の沙耶と視線が交わる。
「沙耶、どうした?喉でも乾いたか?」
いつも通りの声掛けをするが、沙耶の応答はなく。
寝ぼけているだけかと思えば、沙耶は被っているブランットを持ち上げて、ベッドを叩いた。
「沙耶?」
「……ここ、相馬、一緒に」
途切れ途切れで、うつらうつらで。
ふわふわとした声に、相馬は手を伸ばし、沙耶の頭を撫でる。
「俺はいいよ」
「……だめ、……」
「でも」
「こ、こ」
沙耶にがっしりと手首を掴まれ、強引さに血筋を感じつつ、正直、眠気が襲ってきていた相馬は大人しく、沙耶の横で眠ることにした。
すると、横になった瞬間、沙耶が身を寄せてきて。
「あったかいね……」
なんて言いながら、また、すやすやと寝息を立てる。
本当に起きているのかとも思ったが、寝つきの良さから本当に寝ぼけていただけだと思う。
ベッドから出ようと思ったけど、沙耶の手が相馬を掴んで離さないし、暫く様子を見ようとして……相馬は温もりに負けてしまう。
抱き寄せた沙耶は温かくて、
「ん。あったかいな……」
相馬は簡単に、睡魔に引きずり込まれた。


