世界はそれを愛と呼ぶ




「─創祐、それ、俺は聞いてないなぁ」

と、呟いた。

ある程度は把握してそうだが、流石に両親特定までは出来ていないと話していたことを思い出し、無理にDNAとかを使ってでも探さなかったんだなと思ってしまう。

「逃げ出したことは、話したよ?」

「そうじゃなくて。両親の話。覚えてるの、誰か」

「名前だけだよ」

「名前覚えているだけでも、上等だけど?」

「え、探せるの。健斗さん」

「探すことは余裕だ。会えるかどうかは、それこそ、相馬の力を借りなければはらないかもしれんが。大体、なんで急にそんなことを相馬に頼むんだ。初対面で」

「?、靴脱いでたら、常磐って聞こえたから」

「…常磐が関係しているのか?」

健斗さんの声のトーンが低くなり、それでも目をぱちくりさせた創祐は頷いた。

「うん。俺、双子の兄がいるんだけど」

「─ん!?」

─松山創祐は、すごい人物かもしれない。
基本、全ての事を先回り、余裕のある微笑みしか見たことがない相馬は、明らかに創祐の言動に振り回されている健斗さんに新鮮味を感じてしまう。

「音楽がすごく好きで、作曲とかもしてて、俺、あいつが言ってたことは音で覚えてて」

「創祐?ちょっと待って」

「〜♪、♪、〜〜♪って感じで」

「創祐」

「あ、〜♪は〜〜♪〜♪の方かな」

「創祐、ちょっと1回待ちなさい。そのお兄さんはどこにいるか知っているのか?大体、それを勇真や麻衣子には話しているのか?」

健斗さんが肩を掴むと、やっと止まる。

「?、兄さんなら俺より先に脱走して、消えたけど」

創祐は目を瞬かせながら、首を傾げて。

「あと聞かれてないから、話してないよ」

「否、お前はなぜ、そんなに落ち着いているんだ……?」

健斗さんが分かりやすく、困惑している。

「あいつなら生きてるだろうなぁって、何となく思うから?居なくなったりしたら、寂しくて寒いと思うし。今、全然そんなことないから、どっかで上手く生きてるかなって。自由が故に方向音痴で、音楽の天才だった」

「……」

「だから、あいつの安否は何も心配してない」

双子ゆえの感覚なのだろうか。
健斗さんはため息混じりに頭を抱え、

「じゃあ、知ってる名前だけ教えてくれ」

「?、うん。トキワとミカナギ、あと、レイメイ」

「─ん。わかった」

「探してくれるの?」

「探す。だから、変な行動はしないでくれよ」

「わかった」

「勇真達にも、俺から話すから。また後日、皆で話そう」

健斗さんがそう言うと、創祐は素直に頷いた。
そして、自室へと向かって行った。