世界はそれを愛と呼ぶ




「計算上、有り得ないということか?」

「否、第三夫人の子どもは16の年のはずだから、おかしくは無いが、第一夫人がお前の存在を苦に自殺することはい。勿論、第二夫人も。第三夫人は健在だから、恐らく、お前の母親と関係を持ったのは、第三夫人との婚姻が纏まる前後くらいだろう。その時代、俺はまだ小さいので、ちゃんと調べてみないと、断言は出来ないが」

「めちゃくちゃ気持ちわりぃ……」

無言で話を聞いていた怜皇が、ぼそりと呟いた。
そして、驚きを隠せてない槙は、

「どいつもこいつも、俺の周りの大人はクズばっかり」

と、ふかーいため息。

「じゃあ、俺が【期待はずれ】なのは」

「実子としての認知が取れなかったからじゃないか?第三夫人は深く、当主を愛していると聞いているが」

「だから、婚外子には厳しいと?でも、第三夫人?」

「そこはもう少し踏み込んで確認しないと分からないだろうな。……まあ、調べてみるよ。それより、急に常磐を気にするのは何でだ?誰かに何かを言われたのか?」

すると、槙は頷いた。

「沙耶が帰ってくるより少し前に、知らん男に言われたんだ。そして、四季の家の存在と、自分が夫人を追い込んで生まれた子供である婚外子であり、だから、苦労するのも仕方がないのだと言われて。腹が立って殴った」

「そのあとは?」

「?、湊さんが回収して行ったよ」

その言葉に沙耶の方を見ると、沙耶も同じことを考えているらしく、頷き返してくれた。

謎が多い、黒橋家の家政婦のような男。
感情の読めない瞳の奥に、彼は何を隠しているのか。

「……とりあえず、今は校内の見回りに行くよ」

「槙?」

「俺に出来ることは何も無いだろうし、俺が殴った相手、あとから聞いたら不法侵入だそうだ。この街でそれが可能なはずがないのに。だから……」

色々、考えてくれているのだろう。
下手な機密を聞かなくて済むよう、すぐに去ろうとするところも、彼がここまで頑張って生きてきた成果物。

「大丈夫だ。槙」

「御園」

「沙耶は、俺が守るから」

ある程度の、街の動きは把握しているのだろう。
相馬が中途半端な時期に、転入してきた真の理由も。

相馬の発言に軽く目を張った槙は満足そうに微笑んで、怜皇を半ば引きずりながら、部屋を出ていく。

相馬たちの話を聞かないように別室へ移動してくれていた下のやつらも、2人についていくらしい。