「そんなに夫人を迎えているのは、夏だけだ」
春の華宮は色々あったとはいえ、今の当主は愛妻家で、彼は愛妻が遺した後継者の娘と二人暮らし。
秋と冬も、密偵によると、様々な問題事が散らかっているようだが─……。
(報告によれば、第一夫人は精神を病んだ自殺じゃなくて、他殺であると最初はされていたと聞いた)
それがねじ曲げられ、精神を病んだ末の自殺とされているならば、間違いなく、夏の当主は関係している。
そもそも、夜雨に調べさせた結果、夏はかなり真っ黒であり、変な宗教じみた風習があるようだと。
変な宗教団体に成長する前に潰さなければならないと思っていた矢先、これはなんの因果か。
「─槙、お前、常磐の人間か?」
「常磐……?分からんけど、そこの当主と関係持って俺を授かったって言ってたよ」
「……」
あの男のことだから、有象無象の女に手をつけているだろう。だが、風習の件を考えると、槙がいるなら、それで、“終わり”になったはずだろう。
そうならなかったのは、槙の母親の問題か?
─否、そんなことを気にするような男では無い。
もう、その思考に至らぬほどに狂い壊れている。
(槙の存在を知らなかった?だとすれば、本当に一夜だけの関係?でも、槙の母親はかなりお金にも男にもだらしがないという話だ。そんな人が、常磐なんて名家との縁切りを簡単に望むだろうか?)
それとも、単純に父親を求める幼子についた嘘か。
「槙、お前の母親はどこにいる?」
「母親?それなら、この間、5度目の離婚をしたと風の噂で聞いたけど……生きてはいるよ」
「会っては?」
「ない。あの人からしたら、俺は期待はずれだから」
「期待はずれ?」
「そう。俺がいれば得をすると思ったのに、そんなことなく、穀潰しが生まれただけだ〜って、昔はよく殴られたりしたよ。俺としても、あの人は色んなことをやらかしているし、俺の記憶上、父親らしい人もコロコロ変わっては、面倒事ばかり持ってくるから、どうでも良い。正直、会いたくないね。不幸中の幸いか、この街に捨てられたおかげで、今も何とか生きていけてるから、そこだけは感謝してるけど」
あまりにも、槙が良い子過ぎてびっくりする。
けど、それ以上に、【期待はずれ】の……?
「槙、お前、ひとりっ子だよな」
「うん?弟妹は五人……」
「ああ、悪い。言い方を変える。双子でも、三つ子でもないよな?」
「それなら、そうだよ。俺はひとりで生まれたはず」
「どうして急に、四季の家を気にするんだ?その家の第一夫人は、それこそかなり前に亡くなられている。それがお前の責任かと問われたら、それは怪しいところだ。何より、お前の父親かもしれない男にこんなことを言いたくないが、あの家は信仰じみていて、近々、潰さなければならないかもしれないと言われている家だ」
「頭がヤバいってこと?」
「そうだな。少なくとも、第一夫人との間の子は既に50は超えている」
「50っ?」
「だから、お前が本当にその男の子供ならば、兄弟間で年の差は32あることになる。今は第三夫人を迎えていらっしゃるが、当主は愛人の元に入り浸りと聞いている」
「……」
「第二夫人の子もまた、50を超えていたはずだ。例外で言えば、第三夫人。彼女は第一夫人、第二夫人との間の子よりも年下の、四十代と聞いている」
だから、否定が出来ない。
第三夫人である彼女の子であり、次期当主とされている息子は水樹たちと同い年であり、傀儡と噂だ。


