「貴方に本来なら、俺は近づけない立場だ」
「まあ……うん、そうだね」
肯定しづらいが、決して間違いではない。
相馬は本来なら、この街に来なかった。
甲斐とふたり、または家族と、家や会社で、時には海外で仕事を淡々とこなし、来るべき時に来るべき相手を迎えるか、または養子を迎え、その生涯を終えただろう。
相馬には友人はおらず、いるのは決まった幼なじみ達ばかり。遊びに行くなんて経験も、ここに来なければすることはなかったし、適当に見繕って貰った服を身につけて、自分の好きなものなんて、特に意識することなく、なんの代わり映えもない毎日の中で老いていっただろう。
そんな人生でも、その身は、命は、頭脳は、顔は、この国では大切なものとして扱われる為、多くの護衛がつき、友人なんて作る暇すらもない。
面会だって、予約どころじゃすまない。
その身の上など、細かく全てを調べられた上で、漸く、数分の面会の時間を得られるくらい、雲の上の存在とされ、気付けば、相馬は孤独となっていた。
「俺は望んでないけどね」
「そうなのか?」
「望まないよ。つまらないだろう」
相馬にしかこなせないものなど、滅びてしまえばいい。
どうせ、相馬は長い御園の歴史に比べれば、通過点のひとつ、流れ星のような存在だ。
そんな存在にしか片付けられないものが存在してたまるものかと、常々思っている。
「俺も、どこにでもいる、普通の18歳のつもりだよ」
化け物になる覚悟はできている。
でも、普通になっていいという許しがなかった。
それを与えてくれたのが、黒橋家の、特に沙耶だ。
「……っ、そうだな」
相馬の微笑みに、事情を察してくれたのだろう。
彼も笑い、
「なら、短い間だが、同級生としてよろしく」
と、手を差し出してくる。
「ああ、よろしく。─それで、君の気になることは?」
「え?」
「五人の弟妹がいると言っただろう。この街で生活しているからには、生活で困ることはなさそうだが」
「……あっ、金の無心じゃねぇよ!?」
─誰もそんなことは思っていなかったが、派手な見た目に対し、中身はとても純粋なのかもしれない。
「お金でもいいが、今は自由に動かせるのは……」
「いい、いい、いい、いい!!やめてくれ!怖い!」
手をブンブン振って拒絶する姿を、面白くて眺める。


