世界はそれを愛と呼ぶ




「─まあ、いいや」

話すことを諦めた彼は、相馬に手を差し出す。

「改めまして。柊怜皇です。キングと呼ばれてます。好きなことは寝ること。沙耶とはタメ」

「御園相馬だ。3年のクラスにいる」

握手を交わし、視線を交わし合う。
お姫様のようなタイプかと思えば、その眠そうな瞳の奥には獰猛な何かを飼っているような、鋭さが眠る。

「なるほど。じゃあ、槙(マキ)と行動するといいかもね」

ニコッと微笑んだ怜皇の言葉で、顔を出す男。

「─仁王槙(ニオウ マキ)。3年。怜皇の右腕」

1つ結びの、淡々とした物言い。
着崩した制服は彼のいい加減さを表しており、

「……なるほど?」

相馬が首を傾げると、怜皇は笑みを深めた。

「恐怖政治みたいなことは、俺、向いてないんだ。だから、勝手に自滅するやつは自滅してくれて結構、と、思っている。だけどね、君みたいな大物に何かあったら、なんて、考えたくないわけ」

「そこで、彼を出すのか?」

「槙は強いからね。俺と互角くらい?今はしゃんとして黙っているけど、普通のチャラいいい加減な高校生だから。槙連れてるとね、誰も近づいてこないよ。君に近付いてくるような頭空っぽ人間は、真の目で相手を見ることがないから、槙を上辺だけで判断すんの」

意外と毒舌な怜皇に、呆れたようなため息をつく槙。

「─何度も言っておくが、真実だからな」

「何が」

「俺が、俺たち兄弟が、不倫の末に生まれた子どもってこと。それで原因の母親に捨てられた、なんて、最高のエンタメとして昇華されても文句は言えねぇよ。相手の家庭、ぶち壊しているし」

「だから何。槙は何も悪いことしてないでしょ」

「……」

「なにかしたわけ?したならぶん殴るけど。弟妹食べさせるために行っていたあれやこれを言うなら、蹴るよ」

解決方法が暴力しかないのは気になるところだが、槙は気まずそうな顔をして、咳払い。