世界はそれを愛と呼ぶ




テストは、科目多めだった。
それが、この学校の風潮でもあるらしい。

テストの点数は、1500点満点。
各科目100点満点の、15科目。
なお、全て筆記のみであり、実技はまた別らしい。

そこかしこから、「追試だ」「うーん、あと少しだったな」とか、様々な声が聞こえてくる中で。

「─勉強してなかったから不安だったけど、サボれるや」

と、沙耶が横で呟いた。瞬間。

「サボんなや」

と、沙耶の頭を叩く何か。

沙耶が顔を上げると、そこに居たのは仁坂先生。

「─え、聖じゃん」

「先生と呼びなさい」

「無理だよ。出会った時、高校生だったでしょ」

「それでも、今はお前の先生なの」

「あ、担任?」

「そう。ほら、靴箱とかいるだろ」

「いる。というか、教師になったんだね」

「適性があったからな」

「そういう変に前向きなとこ、嫌いじゃないよ」

沙耶はそう言いながら、仁坂先生の後をついていく。

相馬は残り、ひとり、テスト結果を眺めていると、今度は見慣れない沙耶の存在にようやく気づいた他の生徒たちが、沙耶を目で追いながら、何かと話している。

なお、相馬はそんなコソコソは基本、どうでも良いので、幼なじみも含めたテスト結果を暗記する。

3年の部は相馬しかいない。相馬は1500点満点で1位。

2年は多いが、全員、50位以内だ。
1位に輝くのは、1492点の沙耶。
3位に、1478点の薫。
4位に、1475点の生徒会長、月島柚香。
10位に、1448点の千歳。
何だかんだ、桜と光輝も高得点取っているし、幸先は良さそうだ。

相馬は、弟たちのことは心配していない。
1年の部を見ると、一位と二位を同点で飾る双子。
相変わらず、昔から変わらないテスト結果である。

……とまぁ、ある程度確認した上で靴箱に戻ると。

「─だいぶ、荒れてない?」

と、冷ややかな目で、一人の男子生徒を踏んでいた。

「……この短時間で、何があったんだ」

そう言って近付くと、

「え、なんか気安く近づいてきたから……」

と、沙耶は困り顔。

「気安く?」

「見慣れない顔だからかな。別にそこまでは良かったんだけど、他の女生徒にぶつかっても気にしてないどころか、舌打ち紛いのことをしていたから。─これさ、あまりにも、教師が舐められてんじゃないの?聖」

「だって、揉め事起こしたくないし」

「うわっ、そんな最悪なことを言う教師、この街に要らないんだけど。こういう馬鹿なヤツらは叩きのめされるため、この学校に送り込まれているんじゃないの?その為に、こちらも承認を下していたはずなんだけど」

「だからって、俺が昔みたいに鉄バット振り回すのは、ちょっとねぇ〜倫理観的に」

「そんな事考える頭が聖にあったことにまず驚くけど、そんなこと言っていたら、お兄ちゃん達は手遅れじゃない」

「それはそう」

「だったら早くどうにかして。別にいいのよ?レンを呼んでも」

「理事長は勘弁。めんどい」

仁坂先生の態度に、大きなため息をつく沙耶。

「─じゃあ、こいつらどうするわけ?外から投げ込まれて、ここで調子に乗らせるの?」

「いや?教育的指導をしますよ」

「大体、怜皇は」

「どっかで寝てるんじゃない?」

「チッ、役に立たないな。あの眠り姫」

沙耶はそういうと、男を解放して。

「相馬、怜皇探そ」

「怜皇?」

「柊怜皇。この小童をまとめる王だよ。この学校の、お兄ちゃんが作った制度の、今の王様」

「柊先生の息子さんか」

「そう。どっかで寝てるだろうから、蹴り起こす」

「知り合いなんだな」

「怜皇のお姉ちゃんと、大樹兄たちが悪友だからね。幼い頃、たまに遊んでもらってたの」

沙耶に手を引かれるまま、とりあえず廊下を歩いていると、さっきよりはっきり聞こえてくる噂声。