『私は腐っても、マフィアの娘なの』
自由で、どこまでも優しくて、
『ライは、私のお母さんにとっては大切な、大親友の息子なんだから!私はお母さんの気持ちを守る為に、ここにいるの。だから─……』
自分よりも、自分の周囲の人を幸せにしてくれる人。
『多喜子〜!』
甘えたがりで、
『ライ!多喜子を大事にしてよね!』
常に、そばにいてくれた。
『……多喜子、本当に、それで良いの?』
何度も確認してくれて、
『お願い……私、私が、出来るのは』
泣きじゃくる多喜子を抱き締めてくれて、
『私っ、ライを失いたくないのっ』
自分勝手なわがままで、出来た親友を縛り付けた。
『ライ!こっちこっち!』
それでも、彼女は笑顔を失うことはなかった。
『病める時も健やかなる時も……』
自分とライの結婚式の後、飛んできた彼女は多喜子とライの結婚式も挙げてくれて、
『ごめんね、こんなことしか出来なくて』
と、泣きながら、祝ってくれた。
泣きながら、抱きしめてくれて。
多喜子が願ったことなのに。
自分勝手なものなのに。
『やっぱり……』
困惑するライに、彼女は涙を拭って、ライの胸倉を掴んで。
『良い?あなたが愛するのは、心を渡すのは、多喜子だけでいいの!……この家に後継者が必要だからって、変な女をあんたに宛てがわれるくらいならって、私が立候補したけど……』
長年の虐待で、多喜子は子どもを成せなくなっていた。
それどころか、多喜子には戸籍が存在しないらしい。
この世界で生きていくことを認められていない多喜子には、ライとの子どもを産み育てる資格なんてなかった。
それでも、彼が他の女性と結婚するのは、子どもを産み育てるのは嫌で、でも、それをしなければ、ライは私達の最大の敵であるあの人に、家を乗っ取られてしまう、身代わりにされてしまう、狂ったあの人は何をどうしたのか、多喜子たちが周囲に助けを求めることが出来ないように手を回していて、逃げ場がなかった。
『多喜子!見て見て、多喜子にそっくり!』
『フフフッ、私、一応、ライの妹だけど、全く、ライと血縁関係にないよ〜?』
『でも、この子は美人になるわ!多喜子がこんなにも綺麗で可愛くて、優しいんだもの!』
黒髪の、可愛い女の子。
大人しくて、静かな寝息を立てていて。
『……じゃあ、この子は?』
一方、大泣きしている女の子。
双子だったらしい、ふたりの子供。
『ライの抱き方が悪いんじゃない?』
ぽんっ、と、多喜子に預けられる、金髪の女の子。
『……この子は、貴女にそっくりね』
多喜子の腕に抱かれた瞬間、ピタリと泣き止んだその子を見て、多喜子がそう笑うと。
『フフフッ、この子も多喜子の優しさが伝わってるのね!』
なんて。
そんなのは、貴女の方よ。─それは、言えなかった言葉。
『この子のね、名付け親になって欲しいの』
『え?』
『当たり前でしょ?この子は私たち3人の子ども、宝物なんだから!私は産むという大業を果たしたわ!次は多喜子の番よ』
暫く辞退したけど、ライも彼女を説得しようとしてくれたけど、彼女はずっとずっとずっと言い続けて、引かなくて、とっても頑固で。
『……どう、かな』
有り余る時間全てを費やして、悩んだ名前。
『とっても素敵な名前!これ、私の国でも通じるようにしてくれたの!?』
『う、うん。海外でも使える?』
『もっちろん!しかも、私の名前の漢字も入ってる!お母さんのも!嬉し〜!』
そう言って喜ぶ彼女。
『あ、でも、待って?私得すぎない?』
それでいて、なんかズレている彼女。
彼女が言いたいことは既にわかっていたから、
『良いの!私の名前は、“多くの喜びを感じられますように”って、ライが付けてくれた名前だから。─貴女のお陰で、もう、十二分に喜びを学べて、幸せだから!』


