世界はそれを愛と呼ぶ




「………ぁ」

手が震える。あの人は無事だろうか。
生きているだろうか。

「……っ、は」

私のせいで狙われていないだろうか。
今も、彼の隣で笑っているだろうか。

(湊なら……)

唐突にせり上がってくる感情は、焦りか。哀しみか。
震える手で口元を覆う。

怖い、怖い怖い、怖い怖い怖い……あの人は、私に降りかかる災厄をどうにかしようとしてくれていた。

もしかしたら、今、嗚呼、嫌だ、相馬、華宮、だから!

「─沙耶!」

俯いていた。強制的に顔を上げさせられた。
視線が上がる。
相馬の綺麗な瞳と交じり、呼吸を止めていたことに気づく。

ヒュッ、と、喉が鳴り、涙がボロボロと溢れ出す。

「……そ、ま」

「ん?」

「わ、私、手紙、」

「今月の分?ちゃんと保管してあるよ」

「ぁ……お父さんと、、お母さんは……」

「無事だよ。あとで電話してみようか」

「お兄ちゃ……」

「大丈夫。無事だよ。……どうした?俺の質問が、引っかかってしまった?」

優しく微笑みながら、床に膝をついて、見上げてくる相馬。優しい手が、頬に触れてくれる。
温もりを、分けられているみたいに。

「桜たちを見てて、思い出したの……」

「うん」

「華宮は……幸の家、湊の家……ううん、本家じゃなくて、えっと、あれは」

「大丈夫」

相馬は立ち上がると、沙耶を抱き締めてくれる。
暖かくて、聞こえてくる鼓動は震えを止めてくれる。

「相馬、相馬は……えっと、」

「沙耶、深呼吸。いつも通り、俺の鼓動を聞いて」

息を思い切り吐き出して、吸って、トクトクトクと聞こえてくる、優しい鼓動に合わせて。

「今、電話があった」

「……ん」

「華宮の分家の子と話をしたんだ。少し前まで、華宮家は荒れていたからね。……湊さん、華宮家と知り合い?」

頭を撫でられながら、問われる。
何故か一気に心を恐怖で支配され、未だに震える手に力を込めると、それを止めるように、手も握られる。

「わ、わからない」

「わからないのか」

「ご、ごめんなさ」

「謝ることじゃないだろう。─沙耶、とりあえず、深呼吸を繰り返して。その後、湊さんに電話をしよう?」

優しい声が降る。首を縦に振ると、相馬はぽんぽんと優しく、背中を叩いてくれた。