「うん、可愛い」
別に隠すことでもないので、素直にそう言えば、沙耶は真っ赤になって。
「……可愛いな」
「相馬、また寝ぼけてる?」
両手で顔を覆って、指の隙間からこちらを見てくる沙耶。
「ん〜」
目は醒めているけど、少し頭はぼんやりしていて。
そういや、そろそろ新月が近い…薬飲まなきゃ…とか。
沙耶の肩に頭を預けて微睡んでいると、沙耶は徐に相馬の頭を撫で始めて、心地の良さに本当に二度寝をしそうになりながら、
「何もいらない。何もしなくていいから、そばにいて」
相馬はそう、自分の願望を口にする。
沙耶は一瞬、撫でる手を止めて、小さく笑う。
「もちろん」
ずっと感じていた心地の良さに、名前をつけたらダメだ。
もう完全に引き返せない。
「沙耶 」
「なあに」
「今度、どっか行こ」
「どっかって?」
「あとでゆっくり決めて、ふたりで」
「─フフッ、それはいいね。賛成」
ふたりして特に強い願望もないし、出かけるタイプでもないから、一緒に探す。
課題は山盛りで、相馬の仕事は膨大で、この街に来るまでは、沙耶と出会うまでは何徹でもして、仕事をこなしていたことが、遠い過去のようで。
微睡む朝は、とても気持ちが良かった。


