「最終的に、五代目は?」
「孫、曾孫、玄孫を見ても生き続け、孤独感に苛まれ、彼がいる限り、誰も御園に手出しはできず、『化け物』と呼ばれるようになり……今から、約110年くらい前に漸く、命を落とすことができたと」
「110……って、最近じゃない!」
「だね。凄いよね。大体、1000年近く?ずっと、日記を書き続けたんだから」
「え、えぇ……そこ?」
相馬の驚きポイントが分からず、動揺してしまう。
「当主となった人間は少なくとも、月に1回は日記を残しておかなければならないんだ」
「大変だね……」
「や、まぁ、書き慣れたら大丈夫だよ」
「あ、そっか。相馬も書いてるんだ」
「うん。適当に書いてる。今月は雨が多かった〜とか」
「想像以上に適当」
「だって、面倒くさいじゃん?」
ケロッと言う相馬は、沙耶に甘えるように。
「─でもね、運命は彼を逃がさないんだ」
「……ん?どういう」
「あまりにも強い彼は、【鬼の王】の名前を欲しいままにした。彼がいる限り、鬼も、人も逆らわず、強く、常に平和で。でも、彼は孤独に追い込まれ、壊れていった」
「五代目さんのことだよね。彼に運命は」
「いたよ。そう書いてあった。でも、その運命はいつの時代に出会っても、彼の手をすり抜ける。彼の元に留まらず、消えていくんだ」
「……」
「だから、彼は諦めた。安心を求めることも、誰かに愛されることも」
「ひとりで亡くなってしまったの?」
「いや……そこら辺はよく分からない。記録が残ってないんだよ」
「残ってない?いちばん重要じゃない?」
「そうなんだけど……別の人間が書いた歴史から見ると、彼が優しい目で見つめる先にいる、たったひとりの女性の描写を見たことがあるから……」
「じゃあ、運命と会えたってことかな」
「……どうだろうね?」
相馬は意味深に微笑んで、沙耶の頬を撫でた。
「俺もね、【鬼の王】だよ」
「……」
「怖い?」
平然とした態度で、見つめてくる相馬。
表情が読めない態度は、まるで─……。


