世界はそれを愛と呼ぶ




「─そのような仏様がいくつも発見され、今も未解決事件となっている」

叶夢が言いたいこと、理解してしまった。
けど、理解したからとて、どうするというのか。

─♪

その時、電話が鳴った。
相馬がスマホを取り出すと、相手は。

「……」

─何故、こんなタイミングで。
こちらの姿が見えているのではないかと疑ってしまうタイミングにかかってきた電話の向こう。
優しくて、柔らかな声は、黒宮茉白のものだった。

『こんにちは』

「どうした?何かあったか」

『ううん。君がつけてくれた護衛のおかげで、のんびりと買い物を楽しませてもらってる。僕がここに混ぜてもらうの、やっぱり気が引けるけど……』

話を聞くと、今はお留守番らしい。
沙耶達はフードコートでお買い物らしく、荷物番中なんだとか。

『ああ、僕にはアキがいるから』

「そう」

『ハルは、フードコートの使い方が分からないみんなに連れて行かれてね』

「楽しめているか?」

『それが意外と。─今、多分、人生でいちばん幸せなんだ。だから─あ、アキ、これ捨ててきて』

『お前……』

『すぐそこでしょ。ある程度は自分でも守れるから』

まだ車椅子で、慧から離れての買い物なのに……あまりの自信に、アキがため息をつく。

『すごく幸せだよ、相馬』

「茉白」

『ハハッ、君は本当に賢いんだね。僕はもう組織の人間として活躍する日は来ないけど、この頭の中に入っているものは全て、僕のものだ。だから、今が最上に幸せだから、覚悟はできているよ』

「お前、何を考えている」

『僕は幸せになりたい。だから、君と交渉をしたい』

「……」

『僕を、救って欲しい。─幼い頃、実験の過程で、大量に血を入れられた時、あいつらは『御園』といった。君は、その御園の人間だろう?御園の血液を多量に注入された子どもはみんな、目の前で死んでいった、狂っていったんだ。適合者というのが、注入されて死ななかった子ども……つまり、僕たちみたいな存在を指すなら、聞かせて欲しい。─……僕は幸せになれるかい』

ざわり、と、気持ちが悪い。
身体の中を這いずる感覚。
血が沸騰するような、心が冷えていくような。

「幸せになれる。─慧と、生きていくんだろう」

相馬が何とか一言絞り出すと、電話の向こうで、彼女は笑った。

『うん。─実はね、君を初めて意識した時、僕は君に傅きそうになったんだ。……つまり、僕は適合者であることは間違いないのだろう。でも、僕は中途半端な存在だ。─ああ、残念だが、これ以上、厳しそうだな。皆が戻ってきた。また、時間を設けてほしい。では』

切れた電話。力なく、落ちる腕。
考えられる、最悪な状況。
そして、身体の中で人の世界を蹂躙しようとする衝動。