世界はそれを愛と呼ぶ



「国半壊で済めば……って、」

「あぁ、別にそういう残虐と違うけど。こういうものはデータがない限り、機械にはどうにもできない。そして、人間も同じこと。情報が無ければ、何も分からないものだ。でも、あいつらは違う。その紙に残った匂いを、“食物”としての欲求のままを求めるから、見つけ出せる。その代償は地獄絵図だろうなぁって話」

相馬はそう言いながら、起こりうる最悪を説明した。
顔を真っ青にした光輝は、子供向けのおもちゃメーカーの御曹司なだけあって、想像力がとても豊かである。

「相馬がいなきゃ、ここは既に人間の国じゃないよ……」

震える彼には少し申し訳ないことをしたかもしれないが、それが現実で、だからこそ、その境界線ははっきりさせておくべきというのが、相馬の見解である。

「その為に、俺達は存在してるんだ。─で、ここからが本題なんだが」

怯える光輝の背を叩き、話を進める。

「話をした通り、あの廃墟では人体実験が行われていたのではないか、という予想が今、慧によって立てられていて、その説は婚約者である茉白によって、ほぼ黒に近いと断定されている」

ちゃんと本人から話を聞くことができていないが、今度、ここにいるメンバー全員で話を聞きに行っても大丈夫との事なので、その機会は別に設けるとして。

─相馬が話を進めようとすると。

「え、慧くんに婚約者……?」

事前情報に書いてなかったせいか、千歳と光輝は大困惑。
相模と甲斐は御園の家の方から情報がいっているみたいで、薫も特に驚いていなかったが、やっぱりあの朴念仁に婚約者は誰もが驚く道なのだろう。─しかも。

ドサドサドサッ

─タイミング良く、嫌な音が響き、玄関の方へ顔を出すと、驚きを隠せていない不健康そうな男がひとり。

「……何が、どうして、そうなった」

この街に住んでいたくせに、何も知らない慧の弟の登場である。

「いや、盗み聞きするなよ」

水樹に突っ込まれるが、今はそれどころじゃないらしい。

「学校の教員として、お前たちが学校にいる間、出来ることあるか〜ってノリで来ただけだったんだが……」

「や、その前に寝た方が良いんじゃ?」

「顔色が終わりすぎてるよ、保健医」

双子に突っ込まれつつ、靴を脱いだ男は落とした荷物を再度、机に置いた。