御曹司に一年間ほぼ軟禁状態の生活をさせられました。でも、幸せなのでかまいません。




御曹司に拾われてから、ずっとタワマンの最上階にいる。もう一年くらい、ほとんど部屋から出ていない。


大学を卒業して、上京して、就いた職場はブラック企業だった。一年半は働いたけど、パワハラが辛くて仕事を辞めた。それから短期バイトで食いつなぐようになって、未来も何も見えない日々を送って·····。


パパ活や水商売を知り合いに勧められたりしたけど、怖くて出来なかった。それでも金銭が足りなくなった時、一度だけ、おじさんと食事だけしようと思ってしまった。案の定、ホテルに連れ込まれそうになって、雨の中逃げ出して、怖くて街路樹の下で震えていた。


そこで、声をかけて、助けてくれたのが、シオンさんだった。私のためにわざわざ大きなタオルを持って来てくれて、近くにあった彼の家で保護された。


それが、タワマンの最上階で。シオンさんは大手食品メーカーの御曹司で。最初は下心があるのだろうかと警戒していたけど、シオンさんは何もしなかった。ただ、私をそこに泊めてくれていた。


彼は私によく尽くしてくれた。好きなものは何でも購入してかまわない。料理や家事をしなくてもいい。ただ、


この家から出ないで欲しい。本当に用事があって外出する時は、絶対シオンさんから離れてはいけない。


そういう条件があって、私はここに、一年間軟禁されている。逃げてもよかったけれど、逃げることをしなかった。自然と、優しくて、甘い声のするシオンさんに、惹かれていったから。