“ 好きです。付き合ってください”

初めての彼氏からの告白は声ではなく、とても綺麗に書かれた文字でした。



✻✻✻


私の学校の図書室は今日も静か。


本当に一言も喋っちゃいけなくてどこよりも静かなところだ。


人はとっても少なくて、勉強にはもってこい。


そして、───


桜庭くんが私の斜め前に座っている。


幅の広い机を挟んで向かい合わせに座る。


これがいつもの位置。


でも目が合うことは無い。


桜庭くんは今日も窓の外を見てる。


何を見ているんだろう。



図書室の窓からは裏庭とその先にある体育館が見える。


体育館のドアがいつも空いていて、女バスが練習しているのが見える。


あの中に好きな子がいるのかな。



自分で勝手に考えて心臓がちくっとする。


“桜庭 一樹 ”ノートに名前を書いて直ぐに消す。



この恋、叶えばいいのに。


桜庭くんがいるから今日も図書室に通う。





昼休み
キーンコーンカーンコーン

ご飯を買いに購買へ向かう




「また今日も図書室いくのか?」

「うん」

「見てばっかじゃなくて話しかけろよ」

「図書室は喋れないもん」

「他のとこで話せばいいだろー」

「もう告っちゃえ!」



ふと横を見ると自販機の前で桜庭くんとその友達が話しているのが見えて、

「もう告っちゃえ!」

がはっきりと聞こえた。


図書室から見てるとか聞こえたから、やっぱり好きな人が窓から見えるから図書室に来てたんだ。


そっか。

そうかも?と思うのと事実を知るのとは全然違う。


今日図書室行くのやめようかな。


そのとき

一瞬目が合った。

え?


こっちに来てる?


「今日図書室くる?」

「うん。」

え?

「俺今日行くの遅くなるから、いつもの席、とっといて」

「、、わかった。」


あ、そういうことか。そんなに好きな子を見たいんだな


席なんて沢山空いているのに。


桜庭くんの席窓見やすいもんね、好きな子見やすいもんね。


今日もまた図書室に行くことになった。


桜庭くんの恋、応援できるかな。


もうすぐ図書室にも来なくなるのかな。



放課後

図書室行かないと。


いつもは張り切ってわくわくしながらいくけど、

今日は足取りが重い。



そして定位置につく。

桜庭くんがいつも座る席には、、水筒を置いておいた。


私は勉強するために来た。

だからノートと教科書を広げる。


頭に大して入ってこないけど、

しばらくノートに文字を書き続けた。


あ、控えめな足音

──桜庭くんが来た。


歩いてきた桜庭くんと少し目が合う。


やっぱり嬉しいと思ってしまう。


私は急いで水筒をどけた。



席に座った桜庭くんはまた窓の外を見た。


目が合った喜びのうえを悲しみが覆っていく。



でももう最後になるかもしれないから。


いつも通り窓を見る桜庭くんの横顔を盗み見る。


え、?

桜庭くんがこっちを見て

私が桜庭くんを見つめているのがばれた。


咄嗟に目を逸らした。


逆に怪しかったかな?





でも何事も無かったかのように桜庭くんはノートに目線を移したかと思うと


スラスラと書いてそのノートを差し出してきた。


“席、ありがとう ”


そして、私もシャーペンをとって


“ どういたしまして”


と桜庭くんのノートにかいた。


自分のノートに書こうと思ったけど、桜庭くんはノートを私の方に寄せたままだったから。


でも、消されないといいな。




さっきノートで会話した後から、しきりに視線を感じる。

やっぱり私がずっと見てるのばれてたのかな。


逆にさっきから私は教科書をずっと見ているだけ


トントン


、、、

!!!!!


??

肩を軽くたたかれた


桜庭くんの方を見ると、

私のノートがとられた。


何だろう


もっとちゃんと勉強しとけば良かった。


あのノート見られたら集中してなくて字が汚いのバレバレじゃん!


本当に困惑していると


何かを書き終わった私のノートを差し出してきた。





“ 好きです。付き合ってください。”





確かにそう書かれていた。

だけど、思い当たる節がない。


いつも近くの席にいるけど、桜庭くんは決まって窓の外を見ていたはず。




私がノートから顔を上げた瞬間


──桜庭君に手を引っ張られてそのまま図書室から連れ出された


ちらりと見えた桜庭くんの顔は夕日に照らされて真っ赤に染まっていた。


桜庭くんが窓を見ていたのは窓に反射してる私を見ていたから

なんてことを知るのはもう少し先の話。