年に一度の「結婚祭」。この国では一番の大イベントだ。その主役は王城で式を挙げる二人。王城で働く者と王家の者だけが許される特権だ。この主役がいなければ「祭り」は催せない。しかし今年はその候補がいない。したがって、唯一独身の私が主役になることができる唯一の存在だ。
 分かっている。分かっているつもりだ。分かっていても
「誰が私と結婚したがるんだ......」
つい愚痴が出てしまう。しかし隣にいるのはこの軽薄な男だからな。
「ま、何とかなるんじゃない?シルベントレは美人だろ」
「それ使い方あってるのか?」
「あってる、あってる」
そう言って眼鏡に手を伸ばしてくる。
「やめろ、ないと何も見えん」
「わかったよ~」
財務大臣のオレガリロは心配になるほど軽い。しかしこれでも既婚だからな。これが国一の愛妻家かと思うとため息が出る。
「『冷酷無慈悲の参謀』と呼ばれる私だぞ?どこにこんなのと結婚したがる物好きがいるんだ......」
「......」
そこで黙るな。流石に私でも悲しいだろうが。
「いっそ花嫁募集とかどうだ!?」
......なぜそうなった。
「なぜそうなった?」
「思いついたから」
時々この男は理解できない。
「それはいい!」
そのうえ他にも賛同者が現れる。えっ?
「陛下!?」
なぜここに。しかも賛同なさらないでください!?
「陛下もそう思われます!?」
しかも話を進めるな馬鹿!
「ぜひそうするように話してこよう」
あああっ話が終わってしまった。まあ、どうせ誰も応募などしないだろうから、改めて傷つくくらいか。それも嫌だが。
 そんなことを思っていた過去の自分に言おう。「そうではない」と。