May〜秘密の時間〜

（勝てると思ったのに……。みんなに期待されていたのに……）

目の前がぼやけていく。ここから逃げ出したい。しかし体の痛みのせいで動けない。その時だった。真琴の体に影が落ちた。

「おい、とりあえず保健室行くぞ」

真琴に声をかけたのは一番にゴールしたはずの零だった。零は心配そうな顔で真琴を見ている。それが恥ずかしく、真琴は「大丈夫だから」と言ったものの、零は聞かなかった。

「立てねぇってことは相当痛いんだろうが！」

次の瞬間、校庭に悲鳴が上がった。まるでアイドルでも学校に来たかのような盛り上がりを見せている。原因は、零が真琴を抱き上げたためである。

「ちょっと！離して！」

真琴は腕の中でもがいたものの、零は黙って歩き出す。互いの体温が触れ合い、真琴の額に汗が浮かぶ。体温と日差しのせいでとても暑い。

（本当に最悪……）

真琴の顔が真っ赤に染まっていった。



保健室は電気がついておらず、養護の先生が不在なのが一目でわかる。零は気にすることなく椅子に真琴を座らせると、真琴の足に触れた。思わず真琴は叫ぶ。