May〜秘密の時間〜

(絶対負けない……!)

日差しが校庭を容赦なく照らす。今日はまだ五月だというのに、まるで夏かと錯覚してしまうほど暑い。真琴は汗を拭い、他の選手たちと共に校庭に出る。真琴の隣で零は余裕のある表情をしていた。

「それでは、位置について。よーい」

パンッ!

リレーを開始するスターターピストルの音が鳴り響く。真琴たちは一斉に走り出した。すぐに零が先頭に立ち、その後ろに真琴が喰らい付く。真琴が後ろにいることに零は驚いた様子だった。その顔を見て、真琴は口角を上げる。

(この日のために、色々研究してきたんだよ!)

カーブも難なく零の後ろをぴったりとついたまま曲がり、真琴は「もしかしたら追い抜けるのではないか」と思い始めた。その時である。

ガクリと足から力が抜けた。刹那、真琴の体は地面に叩き付けられていた。痛くて動けない間にどんどん追い抜かれていく。零はとっくに一番にゴールしてしまっていた。

(嘘……)

体を起こしたものの、足が痛くて動くことができない。周りの騒めきや視線が痛い。真琴は俯きながら泣きそうになっていた。