May〜秘密の時間〜

「緑川、リレーは男女混合。手加減は無用よ。絶対にあんたに負けたりしないから!」

「何をムキになって言ってんだよ。もしかして、この前の練習試合で俺に負けたの気にしてるの?」

ニヤニヤする零を殴りたい衝動を真琴は必死に抑え、無視して門へと足を進める。心の中には噴火寸前の怒りが燃えていた。真琴は深呼吸を繰り返す。

(ダメダメ。怒って体力を消耗しちゃリレーで勝てない。走る時に力は使うべき)

門の前にはすでにリレーに出場する選手が集まっていた。その中の一人が零を見て「げっ!」と言う。

「緑川じゃん。手加減してくれよ〜。俺、クラスの奴らから「勝たなかったら全員にジュース奢れ」って言われてんだよ〜」

「ハハッ!面白いな〜。みんなのジュース自販機から教室まで運ぶ手伝いならしてやるよ」

零は中学校では陸上部に所属していた。そのため、毎年体育祭ではリレーに出場し、組の勝利に貢献してきた。真琴はジャージを握り締める。額に汗が浮かんだ。

同じ剣道部の仲間となった零とは、一年生の頃から性別の違うライバルである。テストや試合など事あるごとに勝負をしてきた。