子猫令嬢は婚約破棄されて、獅子となる

 この国──ウィンダルスの国民は皆生まれた時に、この世界を作ったとされる五神である『獅子』『鷲』『蛇』『山椒魚』『鮫』のうちの一つの神の加護を受ける。
 生まれて五日の間に最寄りの教会で聖女の『神の目』によって神託を受け、その者がどの加護を受けたのか、ご神託を得るのだ。
 その神託を得たことによりウィンダルス国民とみなされ、この国での住民権をもらう。
 この国では『獅子』『鷲』『蛇』『山椒魚』の加護が良いとされ、特に獅子の加護を持つ者は最も気高く素晴らしい人間と評される。その逆に『鮫』の加護を持つ者は下位の人間、つまり下賤の民とみなされた。
 『獅子』が最も権威を持っているのは、ウィンダルスを建国した初代国王が『獅子』の加護を得ていたからだ。
 では、『鮫』がどうして下賤の民と言われているのか。
 ウィンダルスでそうした上下関係ができてしまったのは、今からちょうど百年前である。
 当時の聖騎士長であったベリリズアが国家に対して反逆を起こしたのだ。