リディの呼びかけも虚しく、ミカエラは不機嫌な様子で去っていった。
(兄上はやはり反省をなさらないのか……)
四大公爵の報告によって兄の悪事に気づいていたエヴァンは、彼の反省の色のなさに落胆する。
しかし、それよりもリディの様子のほうが気になり、急いで部屋の中をもう一度見た。
(リディ……!?)
初めてだった──。
彼女の頬には涙が流れており、必死に自身の感情を抑え込むように目を閉じて肩を震わせている。
気丈な彼女がいかに兄のことを想っていたのかがわかって、エヴァンは悔しさを滲ませた。
それと同時に好意を寄せる彼女のことを泣かせた兄への怒りに襲われる。
エヴァンは柱の陰にもたれかかると、ゆっくりと息を吐いて目を閉じた。
(兄上……)
共に三人で過ごした幼い日々の事を思い出す。
そうして目を開けた彼の瞳は、覚悟を決めたそれだった。
(兄上、俺はリディを守る。だから、あんたからリディを奪う。あいつの幸せのために)
エヴァンはゆっくりとその場を離れた──。
卒業式で婚約破棄宣言がなされた時、エヴァンはぎゅっと手を握り締めた。
(兄上はやはり反省をなさらないのか……)
四大公爵の報告によって兄の悪事に気づいていたエヴァンは、彼の反省の色のなさに落胆する。
しかし、それよりもリディの様子のほうが気になり、急いで部屋の中をもう一度見た。
(リディ……!?)
初めてだった──。
彼女の頬には涙が流れており、必死に自身の感情を抑え込むように目を閉じて肩を震わせている。
気丈な彼女がいかに兄のことを想っていたのかがわかって、エヴァンは悔しさを滲ませた。
それと同時に好意を寄せる彼女のことを泣かせた兄への怒りに襲われる。
エヴァンは柱の陰にもたれかかると、ゆっくりと息を吐いて目を閉じた。
(兄上……)
共に三人で過ごした幼い日々の事を思い出す。
そうして目を開けた彼の瞳は、覚悟を決めたそれだった。
(兄上、俺はリディを守る。だから、あんたからリディを奪う。あいつの幸せのために)
エヴァンはゆっくりとその場を離れた──。
卒業式で婚約破棄宣言がなされた時、エヴァンはぎゅっと手を握り締めた。



