子猫令嬢は婚約破棄されて、獅子となる

「グラス公爵……」

 グラス公爵は胸元のブローチに手をやった。
 それは若かった頃の二人の絆の証として、国王からグラス公爵に贈られたものだった。

「父上、あなたは国民から十数年不当に税を取り立てていた。そして母上もそれに気づいていらっしゃいましたね」
「なんのことだ……」

 国王も王妃もしらを切る。
 国王は冷静に対処しようとしているが、王妃は動揺を隠しきれずにわずかに手が震えている。

「兄上、あなたは国庫金に手をつけて、ルルア嬢の家に多額の金を渡していた」
「なんだとっ!?」

 ミカエラの行為を聞き、叫んだのは国王だった。

「お前はなんということをしたんだ!」

 ミカエラはバレないと思っていたのか、ガタガタと震えだして青ざめていく。
 ルルアもまずいと感じているのか、さっきまで得意げだった顔も白くなっている。

「四大公爵当主から私に要請がありました。『一級公爵書』をもって、一つ、国王と王妃、第一王子から王族の位を奪うこととする。そして、もう一つ、不当な身分制度である『神位制度』の撤廃をする」
「なっ……」

 いくら国王と言えども、『一級公爵書』には逆らえない。