心外だと言わんばかりの真面目な表情で言われてしまえばお礼を言うしかないのだけれど釈然としない。棒読みでの言葉は殿下は気にしていないらしい。
「それで殿下。いつまでこの状態を続ければいいんですの?」
「そうだな……」
どうやら証拠集めは順調に進んではいるらしい。違法薬物も証拠物品として手に入れたは入れた。が、確実に糾弾できるようにもう少し時間をかけたいとのこと。
それでも今月末までには終わらせるらしいのでわたしの悪役令嬢期間もそれまでになるようだ。ひとまずは友人たちにこれ以上の心配をかけることもなさそうだと胸を撫で下ろす。
「では後少し、お互いに頑張りましょう」
「あぁ。負担にはなっていないか?」
「あら、これで結構楽しんでいますわよ」
「そうか、さすがトリシャだ」
さすがとは。果たしてそれも褒め言葉なのかと聞き返そうと思ったが、とてもいい笑顔の殿下の様子を見て言葉を飲み込んだ。うん、褒め言葉として受け取っておこう。


