その尻尾となる相手がどうやらこの学園の低位の貴族令嬢の家らしい。しかもなんの因果か養子として引き取られている。そして何かと婚約者の有無関わらず貴族令息にモテている。………どこかで聞いたことのある話である。
ここまでくればなんとなく想像はつく。
「まるでどこぞの物語のようですわね……」
「あぁ。よく似ているだろう」
読んだ中ではこれが一番似ていたな、と真面目な表情をしてわきにあった何冊かの本の中から一冊を選ぶ婚約者の姿に呆れるやら感心するやら。
「殿下もこういうものをお読みになられるのですね」
「民の嗜好を知るのは王族にとっても利に繋がるからな。君は読まないのか?」
「真面目ですわねぇ……わたしも何冊かは読みましたが、殿下ほどに多くを熟読はしていませんわ」
というかこの人、普段から生徒会の業務と兼任して公務やら何やらもしているはずなのだけれど、どこでこんな大衆小説を手に入れて読む時間があったのだろうか。
「そうか。なら参考書として渡しておこう」
「………参考書」
話が逸れたが、つまりは物語を利用し、殿下自身を囮にしながらこの事件の何かしらの証拠を掴みたいらしい。そのためにより必要なスパイスとして悪役令嬢としてのわたしの役割が必要なのだとか。
まぁ、物語をなぞるなら必要かもしれませんが……
「別段、わたしに話を通す必要ありました?」


