「そうやって私個人に心を配ってくれた貴女となら、これからを一緒に過ごすことが想像できたんだ」
初めて聞く殿下の想いに胸の中に温かいものがぎゅっと詰まったような息苦しさを感じる。でもそれは嫌なものではなくて、むしろ嬉しくて嬉しくて。
こんなふうに思ってくれていた殿下に、わたしは見合う人間になっているだろうか。
子供の頃から変わらず憧れて、子供の頃よりももっとずっと違う想いを抱いて、そばにいたいと、その隣にいられる自分になりたいと思って努力してきた。
例え殿下に求められなくても、支えられなくても、そばにいたいというのはわたしの我儘で。でもそんなわたしのことを殿下は最初から求めてくれていた。
わたしが良いのだと、思ってくれていた。わたしとの未来を、考えてくれていた。
言葉にならない想いがはらはらと涙となって頬を伝う。優しく触れている手のひらに自分のそれを重ねて感情のままに笑む。
「どうか……、っ、至らぬところもたくさんあるわたし、ですが、」
まだまだ、努力し続けている貴方の隣に立つには足りないかもしれないけれど、それでもわたしも追いつけるように進み続けるから。
王族として、相応しくあろうと胸を張って堂々と立っている人。誇り高くあろうと立ち続ける格好いい人。
その在り方に憧れて、恋をした。
「、貴方の、そばに……いさせて下さい……っ」
改めて誓おう。自分自身の在り方を、他の誰でもない、貴方に誇れるように。
「……それは私の台詞だ。トリシャ、どうか生涯私の隣で、私を支えてくれ」
優しく、嬉しそうに笑う殿下の顔がそっと近づく。自然と重なった唇はふわりと甘くて、少しだけ涙の味がした。
fin


