「そうだな……そのように言われるのも客観的に見ればわかる。だが私は私の立場に満足しているし気に入っている」
「何より私は家族が好きだし、その家族が大切にしているこの国も好きだ。守るべきものとして守りたいと思い、そのためにやるべきことを探すのは私にとっては当然のことでそうできることを誇りに思っている」
「何より自分が心からそう思えるもの、一生を賭けてもいいと強く思えるものにひとつでも出会えたことは特別で幸運なことだろう?」
迷いなく、胸を張ってそう言い切る姿が眩しかった。日の光でキラキラ色味を変えて輝く鳶色の瞳が美しくて目が離せなかった。
わたしの自分本位な親切心なんて全く見当違いなもので、むしろ殿下にとってはひどい侮辱に値するのではないかと思って自分が恥ずかしくなった。
子供心にも殿下の凄さがわかって、その後王城を出て家に帰ってからも殿下のことが忘れられなかった。
最初の頃は憧れが強かったのだと思う。殿下のように、一途に何かに心を与えられる姿が眩しくて、わたしもそういうふうになりたいと思った。
婚約者として指名されたときも純粋に嬉しかった。そして婚約者として殿下の姿を見続けていくにつれてこの人の隣に並びたいと思った。この人の考えを知って、一番に理解して、支えになれる人になりたいと思った。
ゆっくりと、けれどまるでそれが自然なことのように殿下はわたしの心の大部分を占めていった。
殿下の隣に相応しい自分でありたいと努力も重ねたし学びも深めた。それを当人に褒められると尚更に嬉しくて。
第三王子という自由もあれば制約も多い中で努力し、国のためを思い動くこの人の隣で生きたいと心の底から思った。


