何故か怒涛のお言葉が殿下の口から流れてきた。あの、申し訳ないのですがほとんど内容が頭の中に入ってこなかったのですけど……お陰で浮かんだ涙も引っ込んでしまったわ。


とりあえず、えっと…どうすればいいのかしら。


混乱の最中にいるわたしが硬直してとりあえず情報の整理をと脳内会議をしていると段々と目が据わってきた殿下になぜか激しく脳内で警鐘が鳴る。会議なんてしている場合じゃないですね、はい。


今さらのように握りしめていた手をそろそろと戻そうとするがそういえば王子妃として恥ずかしくないようにと教育を受けていたせいか常識の範囲内、つまりはエスコートなどでしか直接触れ合う機会なんてなかったのでこの状況というのはなかなかにない場面だったのだな、なんて不意に思う。


きっといろいろなことがあったからわたしの脳の働きも鈍っていたのだろう。むしろそうでなければいけない。そうあってほしい。


触れ合った温もりが離れるのがなんだか名残惜しくて、自然と窺うように殿下を見上げたのがよくなかったのだと後々振り返ってみれば思う。あと男性の心の機微に疎かったことも要因だろう。



ぷつり、



「………………え?」



何か今糸が切れたみたいな音が。いや、幻聴?


同時に強い力で身体が引き寄せられて気がついた時には目の前には視界に入りきらないほどの端正な顔立ちが広がって。



「…………!!?!?!??」



何をされているのか認識した途端にカッと顔だけではなく全身まで血が沸騰したかのように熱くなった。