ここにいてわたしに出来ることなんて何もないとわかっている。他の優秀な人たちに任せた方がいいのは頭では理解している。けれど、
「……っ、…」
王族としての自覚があり過ぎて、まるで窮屈な籠の中にいる鳥のように不自由な人だと思った。けれどそのことを当然のことだと、自分は自分の意思でここにいるのだと堂々と立つ貴方が眩しくて、幼いわたしには衝撃的で。
この人のことを支え、並び立つ存在になりたいと思った。例えわたし自身が籠の鳥になるのだとしてもこの人と同じ籠の中ならば、わたしはきっとそこで満ち足りた日々を送ることができるだろうと思った。
ずっと、ずっと………貴方に求められるならば、
「お側に……どうか、せめて…お側に居させて下さい……っ」
助けになれずとも、支えになれずとも、ただ側に。
祈るように握り返す手のひらに額をつける。
「…っ、ダメだ……!」
「!!でん、か……、」
わたしでは貴方の側にいることすらできないのですか、と思わず未練たらしい本音が溢れそうになる。寸前で飲み込んだけれどその反対に殿下の口が開いて。
「いいか私は確かに自分がそうであるようにと王族として正しい姿を理想として振る舞っているが私とて成人した男の1人でありそういう欲は存在しているわけでその上長い間ともに過ごし焦がれてきた女性が今まさに自分を食べてくれと据え膳置かれている状況に対して紳士的に振る舞う自信がないというかその逆でしかないというかつまりはいいか全ての過程をすっ飛ばして学生結婚をしたくなければ私という野獣から今すぐに速攻距離をとってくれ…!!!」
「……………はい?」


