(・・・なんで・・・・・・)


あと一回って言ったのに。

「絶対決める」って、「まかせろ」って言ったのに・・・!!


(もう・・・・・・っ!!)


期待外れの結果になって、悲しいよりも、私は頭にきてしまう。

私は、鼻息荒くズンズン前へと歩き出し、向かいのコートに転がるボールを拾いに行った。

そして、元いたコートに戻って行くと、早河の隣に立って言う。

「邪魔だから。そこどいて」

怒り顔で私が言うと、早河は、「えっ!?」と戸惑うように驚いた後、「は、はいっ!!」と、私の気迫に押されるようにコートの脇へと移動した。

私は、何度かボールを床につき、深呼吸してペットボトルに狙いを定めた。

・・・よし。

大きく息を吐き出して、天井に向かってボールを上げた。

右手にあたったボールの感触。

かなり久しぶりのサーブだけれど、悪くないんじゃないかと思う。


(・・・いけ・・・っ!)


ゴトン・・・ッ!


「!!」


(っ、や、やった・・・!!)


私のサーブは、見事ペットボトルを倒してくれた。

怪我がきっかけで止めてしまったけれど、私だって、中学まではプレイヤーで結構活躍してたんだから。

「・・・倒れたからね。私はまだ一回目だし・・・、これでオッケーってことにしてあげる」

私は腰に手を当てて、早河に視線を向けてそう言った。

早河は、驚いたように何度か瞳を(またた)くと、「ははっ」と笑って、とても楽しそうな顔をした。

「さすが川合。やっぱ好きだわ」

「・・・!!」

これで「好き」だと返してくれる、早河のことが私もとても好きだと思った。

こんなに素直じゃないのにな。

それでも・・・私のことを、早河は好きって言ってくれるんだ。

「じゃあ・・・、これで、オレと付き合ってくれるってことでいいんだよね?」

「・・・うん。だから、そう言った」

「・・・、っしゃ」

嬉しそうな顔をして、早河は、小さくガッツポーズをとった。

その姿がちょっとかわいくて、私の胸はキュンと鳴る。

「・・・そうしたら・・・・・・、早速だけど、彼氏彼女で帰ろっか」

照れくさそうに、早河が私に右手を差し出した。

部活中、何度も見ている右手だけれど、それが自分に向けられると、いつもと違う感覚がする。