次の日。

バレー部の練習が終わって後片付けをしていると、早河はまた、私に声をかけてきた。

「少しだけ時間ある?」って、昨日と同じことを聞いてきたから、「少しなら」って、私はぶっきらぼうに返事した。


(なんだろう・・・、昨日の言い訳?)


いつもなら、ちゃんと決めれたサーブだけれど、昨日はこういう理由で外してしまったんだとか。

だとしたら・・・ちょっと気まずいんだけど。

部活中はなんとか普通に接することができたけど、練習後、2人きりになって話をするのは、どうにもこうにも落ち着かなかった。

「じゃあ・・・、頼む!昨日のやつ、もう一回だけ挑戦させてくれないか」

「えっ」

「ほんとに、あと一回だけ。今度は絶対決めるから・・・!」

早河は、両手を合わせて「お願いします!!」と私に向かって頭を下げた。

思いのほか必死な様子に、ドキン、と、大きく胸の音が鳴る。

「・・・いいよ。じゃあ・・・あと一回だけね」

ーーー諦めないでいてくれた。

そのことがとても嬉しくて、それだけで、告白の返事をOKにしたいところだけれど、そんなことを言える勇気は私になかった。

だから今日も、私はやっぱり素っ気ない。

「お、おう!まかせろ・・・!」

早河の気合いは十分だった。

見ると、ペットボトルは昨日と同じ場所に置いてある。

昨日の今日だし、わざわざ「あと一回」って言ってきたんだし、自信はあるのだろうから、今日こそはきちんと決めてくれるはず。

私は、今度こそ・・・と祈りを込めて、サーブの準備に取り掛かる早河の姿を見守った。

「・・・」

「・・・」

緊張する。

早河は、「ふー」と大きく息を吐き、ボールを天井に向かってポーンと投げた。

彼の得意なジャンプサーブ。

バシッ・・・!と、ボールを打つ音が体育館に鳴り響き、打たれたボールは、ペットボトルめがけて飛んでいく。


(よし・・・っ!)


いい感じ。

今度こそ!!と、期待したのも束の間だった。

あともう少しという距離で、ボールはペットボトルに当たらなかった。


(・・・、うそ・・・)


「・・・」

「・・・」

2人揃って、呆然としたままコロコロと床に転がるボールを見つめる。

気まずい空気が、体育館を流れてく。