(大丈夫・・・、早河はうちのエースだし、サーブだって上手いもん)


早河は、大きく深呼吸をして、ペットボトルに狙いを定めた。

私は、ドキドキとする胸を抑えつつ、高く上がったボールの行方を目で追った。

絶対に倒してくれるって、期待と願いを込めながら。

ーーーけれど。

「・・・うあっ!!」


(!?)


早河が、頭を抱えた。

打ったボールはペットボトルにはかすりもせずに、向かい側のコートのラインを大幅に越えたところで床へと落ちた。


(・・・え・・・)


なんで。

普段、あんなに上手いのに。

早河がサーブをミスったことなんて、私はほとんど見たことないのに。

なのに・・・。

よりにもよって。


(なんでここで外すかな・・・!!)


早河は、コロコロと転がるボールを絶望の眼差しで見つめている。

私は、期待を裏切られた感覚がして、泣きたいような気持ちになった。


(敵チームもいない状況なんだし、早河なら余裕だろうと思ったのに・・・)


「・・・・・・」

もしかして、告白はバツゲームとか冗談で、私の反応を見ておもしろがっていたのかな。

そんなヤツじゃないっていうのはわかっているけど、この状況で、早河がサーブを外したということが、私には、上手く受け入れられなかった。

「・・・・・・」


(・・・っ、もう・・・っ!)


サーブがどうとか条件なんて付けないで、普通に告ってくれればよかったのに。

そしたら私も・・・、すぐに「うん」って言えたのに。

「・・・・・・じゃあ、私・・・、帰るから」

「えっ!?」

「おつかれさま」

「えっ、ちょっ、川合、待って・・・!」

早河の呼び止める声が聞こえたけれど、私はそれをスルーして、体育館を飛び出した。

だって、なんて言ったらいいの。

「もう一回チャレンジして?」なんて、かわいいことは言えないし、「倒れなかったけど、私も好きだったからいいよ」なんてことも私は言えない。

この態度、素直じゃないってわかってる。

だけど、普通に告ってくれない早河だって悪いんだから。