(あ、れ?ここは……?)

 目を覚ましたエレノアは、ゆっくりと目を開いてからぼうっとしながら横を向く。すると、そこには見知らぬ黒髪の男性が寝息を立てて寝ていた。

(は?え?何?どういうこと!?)

 一気に頭が冴えてエレノアは両目を見張る。ガバッと起きてしまいたいが、隣の男性を起こしてしまうわけにはいかない。そろっと自分の体を確認して、エレノアはホッとした。

(よかった、ドレスは着たままだわ。何もされてない)

 隣の男性も服を着ているようだ。エレノアは心の中で安堵のため息をつくと、倒れてしまう前のことを思い出していた。確か、金髪の男性に手渡されたお酒を飲んだらフラフラして、そのまま気を失ったのだ。目の前の黒髪の男性は、おそらく自分を助けてくれた、のだと思う。自分も相手も仮面をつけていなかった。
 目の前の黒髪の男性の顔を見て、あまりの綺麗さに驚く。瞼が閉じられているが、それでもイケメンであることがよくわかる。

(仮面をつけているときはよくわからなかったけれど、すごく綺麗な顔立ち……!って、見とれてる場合じゃなかったわ!)

 そろりとベッドから抜け出す。とにかく、ここから一刻も早く脱出して屋敷に戻りたい。

(どこのどなたか存じませんが、本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。でも、もう二度とお会いしませんように)

 ベッドで寝ている男性にペコリとお辞儀をして、エレノアはそうっと部屋から抜け出した。