きみの本気は分かりづらい

庇うように私を抱き締めていたゆう兄を
その腕の中から、呆然と見上げれば

ぽたぽたと
ゆう兄の前髪から滴る雫が、私の頬を濡らす



「…」



驚愕の表情を浮かべる私に
ゆう兄は、いつもの笑顔を向けて


そのまま、後ろにいる先輩達を振り返る



「あのさ、俺
影でこういうことする子に、なびく気ないから」



ゆう兄の突然の乱入に
バケツを手にしたまま、唖然と固まっていた先輩

その先輩に向けて
ゆう兄は笑顔で、ばっさりと拒絶を示す


その静かな拒絶は

冷たい表情を向けられるよりも
激しく叱責されるよりも

先輩の心を抉ったようで



「っ!」


「「まり!」」



手にしていたバケツをその場に放り出して

先輩は真っ赤な顔で、涙を浮かべながら
逃げるように、その場から去っていった


残された先輩達も
すぐ我に返って、その後を追っていった