「力作なのに……食べてくれないの?」

「…」

「せっかく、うまく作れたのに……」

「……~~~っ」



私の向かいに座ってるゆう兄が
手にしてるフォークには
綺麗な焼き色のついた卵焼き

それを見つめて
悲しげな表情を浮かべるゆう兄


……そんな、あからさまに
しょんぼりと落ち込まれたら


良心が痛んで


苦悶の末


ゆう兄の手を掴んで
卵焼きが刺さったフォークを
ぱくりと口に入れる



「…」



さっきの悲しげな表情はどこへやら
作戦成功と言わんばかりに
満面の笑みを浮かべるゆう兄



………演技って分かってても
だめなんだよなぁ…


嘘でも、悲しそうにされると放っておけなくなる



非情になり切れない自分に
心の中でため息をつきながら
もぐもぐと口の中の卵焼きを味わう



「美味しいでしょ?」

「……美味しい、けど…」