「…どうしたの?寝れない?」



襖越しに呼びかければ
まだ起きていた様子のゆう兄は
すぐに声を返してくれた

そのことに、ほっとしつつ

私は、枕を抱き締めたまま、ゆう兄に訊ねた




「……そっちで、寝てもいい?」




……。



一瞬の沈黙の後


目の前の襖が静かに開いて


現れたゆう兄は
不安げな表情を浮かべる私を見おろして
小さく笑った




「やっぱり何かあったでしょ?」

「…」

「怖いこと?」

「………夜中に
仲居さんの幽霊が出るって……聞いて……」

「なるほど」



納得したように呟くと
ゆう兄は、そのまま私の横を通り抜けて

しゃがみこむと
私の布団一式を持ち上げた



「いいよ。ほら、入んな」

「…」



私の布団を持って、もといた場所に戻るゆう兄
促されるまま、私はゆう兄の後に続いた