ほんの少し
緊張しながら足を踏み入れた隣の客室


ゆう兄は、用意されていた布団を移動させた後
私に顔を向けた




「むくちゃんはこっち側使って
俺は、そっちで寝るから」

「うん」

「じゃあ、おやすみ。むくちゃん」

「おやすみなさい」




……。



ゆう兄が襖の向こうに消えていった後
私は、そっと自分の胸に手を置いた



………心臓、うるさい…



ただの善意で言ってくれたって分かっていても
さすがに、このシチュエーションで
落ち着いていられるほど、私は恋愛に慣れてない


心臓は早鐘を打ち、顔には熱が走る


体も心も、過剰に反応してしまって困ってしまう



「……はぁ」



顔を覆って、小さくため息をこぼす



それを抑える方法も分からないから
もうひたすら、落ち着くのを待つしかない



そう悟った私は
部屋の明かりを消して、布団の中にもぐり込んだ