「先輩達。あんまり
むくをいじめないでくださいよ」

「篠原も、結構苦労してるんですよ
相川先輩の愛が重すぎて」



真っ赤になるだけで
何も言葉を返せない私の代わりに
杏里と津嶋君が、苦笑混じりに口を開く



「ははっ、悪い悪い。ついな
『難攻不落の相川悠』に溺愛されるって
どんな感じなんだろうなって思ってな」

「なんですか
どこぞの恋愛漫画のヒロインみたいな
その異名は」



南雲先輩が口にしたその言葉に
杏里が、面白そうと言わんばかりに
瞳を揺らし、食いついた



「まぁ、知ってると思うが
相川は、眉目秀麗、文武両道、完全無欠って
言葉を体現したようなやつだからな」

「男女関係なくモテるわけだ」

「告白する人もたくさんいたの
一年生の時なんかは、ほんとにたくさん」

「でも、相川悠は誰にもなびかなかった
どれだけ美人でも、可愛くても、魅力的でも
告白の返事は決まって『No』」

「即断即決NoNoNo」

「色仕掛けとか、情に訴えかけるとか
そういうのも全く通じないから」

「フラれた数多の女子達から
つけられたあだ名が、難攻不落の相川悠」