テレビの画面に流れているのは、僕が好きなアイドルグループ『ライトスターズ』のメンバー達。彼らは歌を歌ってダンスをしたりウインクをしたりして、ファンの女子達を魅了する。

僕は数少ない男性ファンの一人で、特に一番推しているのは青色担当の青葉拓海。

いつもクールな表情をしていて、顔は眉目秀麗。髪は青い短髪。取り止めのないオーラを放ち、他のメンバーの中では異質だった。そんなかっこよさに惚れてしまったのだ。

『青葉』と書かれたうちわグッズと、青のケミカルライトで応援する。

「やっぱり青葉くんが一番かっこいい!グッズたくさん持ってるし、CDやDVDもたくさんあるもんね!会いたいな……」

とライブ映像を見ながら呟くが、そんな奇跡起きるわけない。

僕はスクールカーストでは最下位の陰キャで、友達は一人もいない。黒い短髪にどこにでもいそうなモブキャラみたいな顔をしている。

癒しといえばアニメを見たり、『ライトスターズ』のライブ動画を見たり、音楽を聴いたりするくらい。一度もライブ会場に行ったことがないので、いつか行ってみたいと思ってしまう。

「でも、DVDで応援できるんだ!それでいいや」

そう言葉にしていたのだが、まさかの奇跡が起きた。

ある日の昼下がり。煌々と輝く太陽の下、誰かとぶつかってしまった。たまたま昼ごはんを買いに行こうとしたら、尻餅をついてしまう。

「痛ぇ……」
「……大丈夫?」
「え?」

この冷たい声に聞き覚えがあった。目線を上にすると、そこには青葉拓海が立っている。このオーラは彼のものに違いない。しかも私服姿!?てか私服はパーカーと穴あきジーンズとかダサすぎる。

「もしかして青葉拓海さんですか?」
「まあ……ぶつかってしまったお詫びに、ご馳走する。どう?」
「あ、ありがとうございます……」

話の流れで、彼と近くのカフェに入ることとなった。しかし、一つ気になることがある。

彼がなぜか辺りを見渡していた。誰かと待ち合わせしていたのだろうか?

「誰か探しているんですか?」
「いや、何でもない。入ろう」

手を引かれたまま、カフェに入っていく。推しと手を繋いでいることを実感して、頬が上気してしまう。これ夢じゃないよな!?

しかも彼の服からはミントの爽やかな香りが漂っている。いい匂いだ。