なるべく係わりたくないと思ってた成瀬くん。

だけど隣の席だと、そうも言ってられなかった。

まあ、結果的にはそれでよかったんだけど。

成瀬くんのこと、少し理解できたから。


社会の時間、成瀬くんの消しゴムが机から落ちた。

それが転がってきて、私の足に当たって止まったときには、『勘弁して〜!』って心の声で叫んじゃった。

成瀬くんは黒板を見てて、全然気づいてなかった。

まあ、もし気がついて、私の足元に拾いにこられても、『ひい〜』ってなったと思うから、そのほうがよかった。


だけど、このまま私の陣地にあっても困るじゃない?

だから、ちらっと……本当にちらっとなんだけど……

黒板を見てるフリしながら、横に蹴ってしまおうかなって考えた。

私も消しゴムが転がってきたなんて気づいてなくて、偶然足が当たったら、それが運良く成瀬くんの席に戻った──

そんな演技をしてみようかなって。