丘をのぼると更に金木犀の匂いが濃くなった。

カメラを覗くその子にそっと声を掛ける。


「…なぁ…」


なんて声を掛けたらいいか分からず
ぎこちない声が漏れる。


昨日同様その子の華奢な体がビクッと飛び上がり
俺の方を向いた。


「これ、昨日屋上で落としたヘアピン。君のだよな?」


そっと手を差し出すとその子は小さく頷き
手のひらにあったヘアピンをさっと取った。


そのヘアピンを昨日と同じように耳元につける。
栗色の癖毛の毛がフワッと横になびいた。


「なんの写真撮ってんの?」


このままこの場を離れたくなくて気づいたらそんな事を聞いてた。