「ねぇ、君何年生?」


まさかこんな所で声を掛けられると思っていなかったのか女の子の肩がビクッと跳ねると
ファインダーから顔が離れて顔がこっちを向いた。

長いまつ毛の丸い大きな目に小さな鼻と口、
横顔よりも更に可愛い顔だった。


「あ、ごめん驚かせるつもりはなくて…今日すげー綺麗な夕日だよな」


俺は顔の前で両手をヒラヒラさせながら謝った。


その様子をその子はおどおどしながら見ている。

小さな唇が何か言いたげに動いたかと思うと
その子はぺこっと軽く頭を下げて足早に階段に繋がる扉へと向かう。


通り過ぎる時カッターのボタンが1つ開けられた首元にえんじ色のリボンが見えた。


「悠?俺の財布あったー?…うわっ!ごめん。」


屋上に登ってきた翔とその子がぶつかる。
その子はまたぺこっと頭を下げると更に足早に校舎へと戻って行った。


「あんな可愛い子いたっけ?」

「いや、俺も初めて見たんだけど…えんじ色のリボンだった。」

「ってことは、同級じゃん」


ブレザーから覗くえんじ色のネクタイに触れながら翔は言う。
この高校はネクタイ、リボンの色が学年で違う。
俺たち3年生はえんじ色。


だけど高校生活3年間でその子を見たのは今日が初めてだった。