この恋、遊びにつき。

「すみません」

見たことのない、スーツ姿の男性。
サラリーマン…なのかな?


「はい」

「俺もコーヒーお代りを」

「かしこまりました」



空になったカップにコーヒーを注ぐ。
側には一緒に頼んだ食べかけのガトーショコラ。
甘いもの好きなのかな、と勝手に解釈した。

男の人で甘いものが好きな人は、お酒が好きな人が多い。
そう結城先生が教えてくれた。




「あの」

「あ、はい」

「朋ちゃん、っていうんですか?」



一瞬何のことだろう?と思ったが、すぐにさっきのサラリーマンとのやり取りを思い出した。



「あ、はい。朋子っていいます。常連さんはみんな朋ちゃんって呼ぶんですよ」

そういってエプロンのポケットにいつも入れてあるお店の名刺を出した。
名刺にはお店の住所のほかに、スタッフの名前が書いてある。
私はバイトだけど、一番長く働いてるってことで、さゆりさんが載せてくれた。



「朋子…さんか。バイトさんなんですね」

「はい。当店は初めてですよね」

「はい。前から気になってはいたんですが、なかなかこの通りに来る機会がなくてね」

「今日はこの辺りでお仕事だったんですか?」

「そこのホールで、説明会を」

「ああ…就活生なんですね」

「いえ、人事部なのもで、説明をね」

「あっ、すみません!」

「いいんですよ、気にしないでください」

「本当すみませんでした。御用がありましたら、またお呼びください。では失礼します」






「朋子さん」

「えっ、はい」

「朋子さん、とお呼びすればいいですか?」

「朋ちゃんでいいですよ。みなさんそう呼びますし」




カラン、とドアベルが鳴った。

「いらっしゃいませ」


頭をぺこ、っと下げて席をあとにした。