灯也は珈琲を飲み終わると席を立ち、ダイニングルームを出た後、仕事へ出掛ける準備する為に2階に上がり自分の部屋へと向かった。
灯也の部屋は2階の一番奥の隼也の部屋の隣だった。
部屋に入り、クローゼットからスーツやワイシャツを選び出し、着替えようとした時だった。
微かに隼也の部屋の方から男女の声が聞こえてきた。
男の声は、当然隼也だろう。
そう言えば、紗雪さんが兄さんの部屋に呼ばれていた。
そう思いながら、耳を澄ませていると、微かにだが「やめてください!」と言う紗雪さんの声が聞こえたような気がした。
「あまり騒ぐな!」
この声は兄さんの声だ。
灯也は隣の隼也の部屋が気になり、着替えがなかなか進まずにいた。
そして灯也は着替えが終わると、部屋を出て、隼也の部屋の方を見た。
すると、隼也の部屋の前には床に手を付き、俯く紗雪の姿があった。
「紗雪さん?!」
そう言って、灯也は紗雪に駆け寄る。
よく見ると、紗雪の髪と服は乱れ、明らかに性的な行為を受けた後のようだった。
「大丈夫ですか?!」
「、、、灯也様、大丈夫です。ご心配、ありがとうございます。」
紗雪は泣いた後のように頬に涙を流した跡を残しながら、無理に微笑んで見せた。
その微笑みに灯也は心をグッと掴まれたような感覚に陥り、胸が苦しくなった。



