あなたでよかった


その日の夜、紗雪は雪灯に授乳をしながら、必死に母乳を飲もうとする雪灯の姿に涙を流して見つめていた。

本当に灯也にそっくり。

雪灯は必死に母乳を飲もうとして、生きようとしている。

灯也が居なくなり、一瞬「わたしも灯也の元へ、、、」と頭に過ぎった紗雪だったが、雪灯を置いて死ねない、、、そう思い、雪灯のまだ細い髪の毛が生える頭を撫でながら、「わたしがこの子を守らないと。」と思ったのだった。

しかし、そんな簡単に灯也が居なくなってしまった現実を受け入れることは出来ない。

紗雪は、もう一生分の涙を゙流したのではないかと思う程に、涙を流し続けた。


それから、紗雪も雪灯も何の問題も無かった為、早めに退院させてもらう事にした。

それは、灯也の葬儀を行う為だ。

憔悴しきり、頭が回らない紗雪の為に事情を知った蔦野店長が手伝いに来てくれ、小さな家族葬で灯也を見送った。

それからも蔦野店長は度々、紗雪の元を訪れ、おかずを作り置きしてくれたり、紗雪の代わりにオムツやミルクを買って来てくれたりした。

「店長、、、色々とありがとうございます。」
「いいのよ、気にしないで!じゃあ、また来るからね!」

そう言って、帰って行く蔦野店長。

すると、そのあとすぐにインターホンが鳴り、宅配便が届いた。

紗雪は「何だろう?」と思いながら箱を開けてみると、それは妊娠8ヵ月の時に撮ったマタニティフォトだった。